青年と若い女性とパン屋

2014年08月24日

お昼のTGVでパリからリヨンへ。
ところで,パリには単純にパリ駅と呼ばれている鉄道の駅がありません。パリでリヨン駅といえば,リヨン方面の便の発着駅になっています。リヨンを経由してマルセイユやヨーロッパ諸国への国際便もたくさん発着しています。たしかオリエント・エクスプレスもリヨン駅が発着駅のはず。
というわけで,フランスの首都パリから第二の都市リヨンに鉄道で移動するには,まずホテルからリヨン駅に行く必要があります。
パパのホテルはカルチエ・ラタンの外れにあります。エリート校で名高い理工科学校から歩いて5分,それと(どうでもいい話ですが)パパの母校のパリ第三大学から歩いて10分のところにあります。リヨン駅までは日曜の朝なら車でホテルから10分くらいの所にあるので,大きなスーツ・ケースを引っ張って歩く手間を考えれば,タクシーを使えばいいものを,乏しい出張費しかない落ちこぼれサラリーマン(しかもケチ!)はあえて地下鉄を利用することにしました。幸い,地下鉄の駅はホテルから歩いて3分の所にありますし,乗り換えも1度で済むので。
朝食をとって,シャワーを浴びて,荷造りして,10時前にホテルを出ることに。TGVの出発時間を考えればものすごく早い... と言うよりは,全然早すぎます(実はとっても心配性)。
日曜日の朝,観光地でもないカルチエ・ラタンの外れで開いている店はパン屋さん(パンは主食なので,日本のパン屋さんよりずっと早くから開いているのが一般的です)と個人経営の食料品店(フランス語では,たとえフランス人が経営していたとしても「アラブの小間物屋」と呼ばれています,イスラム教徒は日曜日が安息日ではないからでしょう)くらいです。地下鉄の入り口のパン屋さんも開いていました。店の入り口から数メートルのところには,アラブ系の若者が物乞いをしています。とはいえ,外見はアラブ系とはいえ,こうした若者の多くはフランス国籍を取得しています。生まれたのもフランスで,学校もフランスの普通の学校なので,考え方,価値観,生活スタイルもフランス的な人が多いと言われています。まあ簡単に言ってしまえば,フランス的でないのは外見だけということです。
そのパン屋の店先でのやり取りにパパはビックリしました。
店から買い物を済ませた30〜40歳位の女性(フランス語ではまだこの年代の女性を「若い女性」と呼びます)が,包装紙に包まれたパン(パンオショコラとか,クロワッサンの類い)をそっと物乞いの青年に手渡すと,足早に去って行きました。
彼女が手渡したパンだけ別の包装がしてありましたから,パン屋さんに入店する際に青年のことに気がついた彼女は,彼のためにパンを別個に購入して,包装してもらったのでしょう。
日本ではこういう光景に少なくともパパは一度も立ち会ったことがないので,大変おどろいています。
女性の行動にもおどろいていますが,店の真ん前で物乞いをさせるがままにしているパン屋さんにも驚いています。店先で物乞いをすることが簡単にできるとは日本では想像しがたいからです。
フランスというと,おしゃれやグルメの話題に終始しがちですが,こういう,フランス人にとっては恐らく小さくても,弱者には本当に厳しい日本の常識から見れば,破格の親切に溢れている国でもあると思います(もちろん,嫌な奴はいますし,非白人をいまだに見下したような大バカ者もいないわけではありませんが)。パパも,日本ではありえないようなさりげない親切を,フランスで暮らす人たちからたくさん受けてきました。
で... 結局パパは無事にリヨンに着いて,無線LANが繋がっているホテルの部屋からこのブログを書いています。ちなみに,リヨンの鉄道の駅はリヨン=ペラッシュ駅。そこからホテルにたどり着くまで,道を2度尋ねました。最初の青年は,「あなたが探している通りはこの近辺りの小さな通りで,ええっと〜〜自信がないけどこっちだと思います」と教えてくれました。もっとも,2度目に道を尋ね,「ああ,その通りね... この突き当たりの通りだよ」とちょっとつっけんどんに教えてくれたオジサン(もちろんこちらが正解!)とは正反対の方向を指さしてはいましたが。


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Posted by Machine à lire at 23:40
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